リグレーフィールドのツタの謎|消える打球の独自ルールと誕生秘話
シカゴ・カブスの本拠地として世界中の野球ファンに愛されるリグレー・フィールド。1914年開場というメジャー屈指の歴史を誇るこのスタジアムで、ひときわ異彩を放っているのが、外野フェンスのレンガ壁一面を覆い尽くす鮮やかな「ツタ(アイビー)」です。青空と緑のコントラストは、まさにカブス本拠地名物として親しまれています。
しかし、この緑の壁は単なる美しい景観演出にとどまりません。打球がツタの中に飛び込んでボールが消える珍プレーや、試合の流れを決定づける独自ルール、さらには球界屈指のアイデアマンが仕掛けた誕生秘話が存在します。伝統を受け継ぎながら進化を続けるリグレー・フィールドのツタにまつわる真実を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:打球がツタに埋もれて見失った場合、外野手が両手を挙げてアピールすれば「グラウンドルール二塁打」が適用される。
- 要点2:1937年に名物プロモーターのビル・ヴィークが発案。殺風景な外野レンガ壁の美化とクッション性を目的に植樹された。
- 要点3:植えられている種類は主にボストン・アイビー。大規模改修を経た現在も専門クルーによる繊細な手入れで守られている。
【驚きの誕生秘話】なぜ外野レンガ壁にツタが植えられたのか?植栽の理由と歴史
リグレー・フィールドの外野フェンスにツタが植えられたのは、1937年9月のことでした。仕掛け人は、後にベースボール界随一の奇才プロモーターとして名を馳せることになるビル・ヴィーク(当時カブスの役員)です。
当時、リグレー・フィールドの外野フェンスは無機質なレンガ壁が剥き出しになっており、見た目が極めて殺風景でした。球団オーナーのフィリップ・K・リグレーから「球場をより美しく、ファンが心地よく過ごせる空間にしたい」という意向を受けたヴィークは、レンガ壁を緑で覆うという斬新なアイデアを思いつきます。ツタを這わせることで、景観をエレガントにするだけでなく、外野手がフェンスに激突した際の衝撃を少しでも和らげる狙いもありました。
ヴィークはインディアナポリスの球場(ペリー・スタジアム)のレンガ壁にツタが茂っていた様子にインスピレーションを受け、夜間に自ら作業員とともに球場へ忍び込んでツタを植樹したという伝説が残っています。この大胆な試みは見事に成功し、現在ではメジャーリーグ最古の球場特徴を象徴する唯一無二のアイコンへと昇華しました。
【ボールが消える?】ツタに飛び込んだ際の独自ルールとグラウンドルール二塁打の条件
リグレー・フィールドを舞台にした試合で、ファンの目を最も釘付けにするのが「打球がツタの中に飛び込んだ瞬間」の攻防です。鬱蒼と茂ったツタはボールがすっぽり収まるほどの厚みがあり、外野手が打球を見失うハプニングが度々発生します。
メジャーリーグ機構(MLB)では、こうした球場独自の構造に配慮した「グラウンドルール」を設定しています。リグレー・フィールドにおけるツタのルールは極めて明確です。
打球がフェアグラウンドのツタの中に直接飛び込む、あるいはバウンドして入り込んで見失った場合、外野手は即座に両手を高く挙げて「ボールロスト」を審判員にアピールしなければなりません。審判が打球のロストを確認するとボールデッドとなり、打者には安全進塁権が与えられてグラウンドルール二塁打が宣告されます。
ここで重要なのは外野手の判断です。もし選手が両手を挙げずにツタの中に手を突っ込んでボールを探し出そうとすると、審判は「インプレー継続」と判断します。万が一ボールが見つからず手間取っている間に走者がホームインしてしまうリスクがあるため、外野手には瞬時のルール理解と冷静な判断が求められます。
【ツタの種類と生態】ボストン・アイビーと季節ごとの劇的な変化
フェンスを彩る植物の正体は、一般的に「アイビー」と呼ばれていますが、植物学的には主にボストン・アイビー(ツタ属・ブドウ科のツタ)であり、一部にイングリッシュ・アイビー(キヅタ属・ウコギ科)が混ざり合っています。ボストン・アイビーは吸盤状の巻きひげを使ってレンガの表面にしっかりと張り付き、建物を傷めることなく見事な壁面緑化を作り出します。
この植物の最大の特徴は、落葉性であることです。そのため、シーズンを通して表情が劇的に移り変わります。
メジャーリーグが開幕する4月上旬のシカゴはまだ寒冷で、ツタはほとんど芽吹いておらず、茶色い枯れ枝と赤レンガの地肌が剥き出しの状態です。この時期はクッション性がほぼなく、フェンスに当たった打球は鋭く跳ね返ります。しかし5月中旬から初夏にかけて一気にみずみずしい緑の葉が茂り、夏場には外野フェンス全体が重厚な深緑のカーテンへと変貌します。そして秋のポストシーズンを迎える頃には、葉が赤や黄色に美しく紅葉し、球場全体を情緒豊かな色彩で包み込みます。
【球場改修と現在】メジャー最古級の聖地が守り抜いた「不可侵の緑」
リグレー・フィールドは、ボストンのフェンウェイ・パーク(1912年開場)に次いでメジャーリーグで2番目に古いボールパークです。2014年から数年間にわたり、球場の大規模近代化改修プロジェクト「1060 Project」が実施されました。
巨大な高解像度メインビジョンや最新のクラブハウス、VIPラウンジの新設など、施設全体が21世紀仕様へとアップデートされる中、球団が一貫して守り続けたのが外野レンガ壁とツタの完全保全でした。歴史的建造物としての価値を尊重し、最新テクノロジーと100年を超えるノスタルジーを融合させるスタンスは、地元ファンや全米のベースボールファンから称賛を浴びました。
改修を経た現在も、外野フェンスのツタはカブスの魂として燦然と輝きを放ち続けています。
【職人の手入れ技術】強風と極寒に耐えるグラウンドキーパーの卓越した技
ミシガン湖から吹き付ける冷たい強風(シカゴが「風の街」と呼ばれる所以)や、冬場の厳しい凍結など、植物にとって過酷な気候条件下でツタを美しく維持するのは容易ではありません。そこには、球場専属の園芸・グラウンドキーパーチームによる繊細な手入れがあります。
日々のメンテナンスでは、以下のような綿密な管理が行われています。
壁面のレンガ目地を保護しながら適切にツタを誘導する剪定作業、打球の視認性を損なわないための厚みのコントロール、病害虫の予防と土壌への有機肥料補給など、作業は多岐にわたります。選手がフェンスにぶつかった際にツタが剥がれ落ちた場合でも、根を傷めずに修復するノウハウが世代を超えて受け継がれています。この職人技があるからこそ、毎年変わらぬ美しい外野フェンスが維持されているのです。
【リグレー フィールド ツタ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:もし外野手がツタに手を突っ込んでボールを探し始めたらどうなりますか?
A1:外野手が両手を挙げずにボールを探す動作をした時点で「インプレー」とみなされます。その間にボールが見つからなければ、打者や走者はそのまま進塁を続けることができ、ランニングホームランになるケースもあります。
Q2:ツタの中に虫や鳥の巣、ゴミなどが隠れていることはないのですか?
A2:グラウンドキーパーが定期的にツタ内部の清掃と点検を行っているため、衛生的に保たれています。ただし、過去には試合中にツタの中から以前の試合で挟まったままになっていた練習用ボールがポロリと落ちてくる珍事が起きた記録もあります。
Q3:春先と夏場でプレーの感覚はどのように違いますか?
A3:ツタが枯れてレンガ壁が剥き出しの春先は、打球がレンガに直接当たって大きく跳ね返るため、外野手はクッションボールの処理に集中します。一方、夏場はツタが分厚いクッションの役割を果たし、打球の勢いが吸収されるため、跳ね返り方が全く異なります。
まとめ:伝統とドラマを紡ぎ続ける「生きたフェンス」の魅力
リグレー・フィールドのツタは、単なるスタジアムのデコレーションではありません。ビル・ヴィークの遊び心から始まった歴史は、メジャーリーグの独自ルールを生み出し、季節の移ろいとともに数多くのドラマをグラウンド上に描いてきました。
近代的なドーム球場や最新鋭のスタジアムが増加する現在においても、自然と歴史が息づくこの「生きたフェンス」は唯一無二の存在感を放ちます。シカゴ・カブスの試合を観戦する際は、ぜひ外野フェンスのツタに注目し、1世紀を超えるベースボールのロマンを体感してみてください。 (出典: リグレー フィールド ツタ(Yahoo!ニュース))